“知識だけのFP”を信用するな!
第1章 はじめに
最近、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)をいたるところで目にします。
特に銀行や証券会社、保険販売会社、不動産販売会社の営業に多い印象です。
日本FP協会の統計データによると、CFP・AFP資格者の57%は上に書いた方々ですので、私の印象と実際のデータは一致しているようです。
彼ら彼女らは金融商品を売るためのツールとしてFP資格を取得しており、人事制度の昇格要件にしている会社もあるようです。
私は、この現状に対してかなり違和感を感じています。
・知識だけのFPが増えている
その違和感とは、「知識だけのFPが増えている」ということです。
実際に金融商品を自分で使ったことがない営業が、FP資格という印籠を引っさげて、「この金融商品を買えば、お客様の資産を運用でき、資産を増やすことができます」と提案しているのです。
すべての金融機関の営業がこのようなことをしているとは思いません。
しかし、読んでくださっているあなたも、金融商品の営業を目の前にして違和感を感じた経験があるのではないでしょうか?
・FP資格が営業ツール化している
なぜこのような実態になっているのでしょうか?
それはFP資格の目的が「金融商品を売るため」になっており、本来の「お客様の理想の人生を叶えるために、ライフプランを立て、お金面のお手伝いをする」という目的から遠ざかっているからなのではないか、と考えています。
つまり、FP資格が本来の目的を失い、営業ツール化しているのです。
第2章 なぜ知識だけのFPを信用してはいけないのか
FP資格を営業ツールとしか思っていない営業は、実際に金融商品を運用することはせず、知識だけを有している、と言えます。
・知識だけのFPとは
実際に金融商品を運用せずに、知識だけを有しているFPを、私は“知識だけのFP”と呼んでいます。
意味はそのまま、知識だけした持っておらず、自分で金融商品を運用した経験もなく、お客様に「おすすめの金融商品です」と提案しているFPのことです。
・なぜ知識だけのFPが増えているのか
知識だけのFPが増えている真因は金融に関する法律と金融機関の制度にあります。
金融機関は、営業ツールとしてFP資格を取得するように営業に奨励しています。
一方で、金融商品取引法により、金融機関に勤める人は一部の金融商品取引を禁止されているのです。
(※証券会社に至っては、自分たちが売っている有価証券を購入し、運用することができません)
こうして、実際に金融商品を運用することなく、知識だけを有しているFPが量産されているのです。
・金融商品を売るためのツール化するFP資格
もともと「お客様の理想の人生を叶えるために、ライフプランを立て、お金面のお手伝いをする」目的でつくられたFP資格が、今や金融機関の営業ツールと化しています。
たしかに日本人は肩書きや資格といった権威を盲目的に信用する傾向にあるので、FP資格を持った金融機関の営業の提案をより魅力的に感じてしまう面があると思います。
しかし、魅力的な提案が本当にお客様のためになるのかどうかは別問題です。
・知識だけのFPは自分が運用したことのない金融商品を売っている
繰り返しになりますが、知識だけのFPは自分が運用したことのない金融商品を売っています。
ここで、一度考えてみてください。
もし年率10%で増える金融商品があったとします。
あなたは誰かに売りますか?
それとも自分で買いますか?
私なら買います。
けど、知識だけのFPは売ります。
なぜでしょうか?
・本当にいい金融商品なら売っている人も持っているはず
本当にいい金融商品なら、それを提案する人もその金融商品を運用しているはずです。
しかし、知識だけのFPは自分で運用したことのない金融商品を売っています。
さて、そろそろ気づいてきましたか?
・知識だけのFPはお客様に売る金融商品を買ったことがないという矛盾
そうです。
知識だけのFPは、お客様に売る金融商品を買ったことがない、という矛盾を抱えているのです。
お客様に提案するほどいい金融商品ならその人自身も持っているはずなのに、実際に持ったことがないのです。
あなたもそろそろ違和感を感じませんか?
・マージンが高い金融商品を売りたいという裏事情
なぜお客座に提案するほどいい金融商品をその人自身は持っていないのでしょうか?
もちろん先に述べた金融商品取引法の制約もありますが、金融機関を辞めて買えばいいだけの話です。
けど、それをしない。
その理由は、本当にいい商品なのではなく、マージンが高い金融商品であり、売れれば社内の評価や給与が高まるからです。
第3章 どのようなFPを信用するべきなのか
ここまで知識だけのFPが増えており、そのようなFPは信用してはいけない理由を説明してきました。
では、どのようなFPを信用するべきなのでしょうか?
・自分で買ってよかったと言える金融商品を提案してくれるFP
まず、自分で実際に買って運用している金融商品を提案してくれるFPは信用できます。
なぜなら、FP自身が買って運用している事実からその金融商品には信用性があるとわかるためです。
知識だけのFPが机上の空論で金融商品を勧めるのと違い、信用性が断然高いことがわかります。
・知識だけでなく実体験をもとにおすすめしてくれる
このように、知識だけでなくFP自身の実体験をもとに金融商品をおすすめしてくれることが信用性を高めます。
知識だけのFPの場合、勧める金融商品を実際に運用してみた情報がありません。
実はその情報が購入しようとする人にとって1番大事なのです。
・自分だけでなく周りの運用している人の声も教えてくれる
自分だけでなく周りの運用している人の声も教えてくれるFPはさらに信用性が増します。
運用している人が金融商品を買った後にどのように運用しているのか、運用額をどのように管理しているのか、などの気になることにも正しく答えてもらえます。
運用を始める前だけでなく運用を始めた後のことも考えてくれるFPは、売ることだけでなくお客様の資産を増やすことを真剣に考えてくれている、と言えます。
・売上優先ではなく真にお客様のためになることを提案してくれる
総じて言えることは、いいFPは売上優先ではなくお客様のライフプランを真剣に叶えようと考えてくれていることです。
売りたい金融商品ありきではなく、お客様のライフプランありき。
自分が提供できない金融商品がいいなら、惜しみなくそれを伝える姿勢。
この2点がいいFPを見極めるポイントです。
第4章 真に顧客志向なFPの理想像
しかし、実際はFPも事務所の経営や自身の生活があります。
売上を上げることはFP活動を継続する上でとても大事なことです。
そんな状況も踏まえながら、真に顧客志向なFPの理想像を考えてみます。
・道徳と経済、論語と算術
2024年から一万円札となる渋沢栄一さんは、「経済活動において、利益の追求が目的ではあるが、そこには道徳が必要」と説きました。
さらに昔、勤勉の象徴である二宮尊徳さんは、「論語と算盤のバランスが大事」と言っています。
江戸時代から発達した商人精神において、すでに売上志向と顧客志向のバランスは重要視されていました。
・顧客志向と売上志向のバランスが取れている
2018-2019年は、売上を上げるために違法建築や不正融資をした企業が明るみになり、顧客志向と売上志向のバランスが崩れていることが露呈した年になりました。
いい会社は顧客志向と売上志向のバランスが取れています。
いいFPもしかりです。
売上志向の強い会社やFPは、業績圧力によりバランスが歪みがちになるため、顧客志向とのバランスを取ることが求められます。
・顧客志向の究極はボランティアだが責任感が生まれづらい
この議論をしていると、売上志向は不正の真因であり悪なのだから、FPもボランティアにして顧客志向を極めるべきだ、という意見がときどき出ます。
おっしゃってることはよくわかるのですが、イメージが足りません。
ボランティアにしたら、やる気のある人は品質高く仕事を行うでしょうが、やる気のない人はいい加減に仕事を行うでしょう。
ここで大切なことは、お金をもらうから仕事の品質を保つ責任感が生まれる、ということです。
ボランティアですと、仕事の責任感が生まれづらいため、真に顧客志向とは言えません。
・真に顧客志向なFPは売上志向とのバランスを取りつつFPとしての責任を全うする
まとめると、真に顧客志向なFPは、売上志向とのバランスを取りつつFPとしての責任を全うします。
FPとしての責任とは、「お客様の理想の人生を叶えること」に他なりません。
もちろんお客様自身が「叶えたい」と強く思っていることが前提ですが、その上でお金面のサポートを真剣にすることがFPとしての責任を全うすることと思います。
第5章 おわりに
最後に、真に顧客志向なFPが育つ環境がどんなものなのかをお話しして終わります。
・真に顧客志向なFPが育つ環境とは
現行(2019年5月時点)の金融商品取引法やFP資格の営業ツール化を踏まえると、“知識だけのFP”が育ちやすい環境だと言えます。
真に顧客志向なFPを育てるためには、FP自身が金融商品を運用すること、そして、FP資格を営業ツールとして使うのではなく、お金の専門家を名乗るに値する資格として認知させていくことが大事と思います。
知識だけでなく、実際に運用した経験を持ち、そして、資格の威厳にふさわしいFPが活躍することを祈ります。
関連記事です。
お金の稼ぎ方を見直すことで、働き方は大きく変えることができます。